例えば危ない橋だったとして
廊下に誰も居ないことを確認してから、皐を見上げつつ睨み付けた。
「なん……なんでいきなりあんなこと言っちゃうのー!?」
「……」
しばし沈黙する彼。
今更ながら、背が高過ぎて黙られると凄みがある。
「……なんでって……本当のことなんだし、良いだろ別に」
飄々と言い放つ。
「だって……あんな公言しちゃって、万一別れでもしたら気まずい……」
「……いつか別れると思ってるの?」
「そうじゃないけど……」
しまった。見る間に皐の表情が曇って、失言だったと察知した。
「……ごめん。悪かったよな、俺が」
俯いたまま横を向きつぶやく彼は、何か様子がおかしい。
「さつ……」
顔を覗き込もうとすると、勢いよく腕を口元へ持ち上げ隠した。
映った光景に目を見張った。
その顔が真っ赤に染まっていたから。
「う……浮かれてたんだよ!」
わたしは驚きのあまり、口をあんぐり開いて立ち尽くした。