例えば危ない橋だったとして

水曜日なので業務は定時で終了した。
皐とは、仕事の後に話をしようと約束していた。

以前に来た個室居酒屋に入った。
前回は白っぽい部屋だったが、今回は茶基調の部屋に通され、隣に座った。
落ち着いた雰囲気で、話をするにはうってつけだ。

「飲む? 飲まない?」

皐が気を遣って確認してくれた。
素面で本音が言えるとも思えなかったので、お酒を選んだ。


あの時のように、運ばれて来たシャンディガフを一口喉に流し込む。
テーブルを見つめ、最初の言葉を探す。
話すって言っても……何処から?

「……一千果は、何かに怯えてるの?」

しばらく黙っていた皐が口を開き、わたしは反射的にビクッと体を震わせた。

「理由があるの?」

いつも皐の眼差しに、吸い込まれそうになる。
此処までわたしと深く関わろうとしてくれているこの人に、全てをさらけてしまいたい衝動に駆られた。
受け入れて貰えるだろうか。こんなわたしのことを。

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