例えば危ない橋だったとして

「……びっくりした……。俺は、いつでも挨拶行く準備出来てたけど、一千果がそんなこと考えてたとは思わなかった」

え……? 今なんて?
自分の耳を疑った。

「重いなんて、全然……むしろ嬉しいんだけど」

皐が恥ずかしそうに口元を手で覆った。
その様子に、安心して体の力が抜け、皐の肩に掴まった。

「……うそぉ……良かったぁ……」

皐がわたしのおでこに自分のおでこをくっつけて、囁く。

「いつでも行くよ、心配すんな……」
「うん……ありがとう」

こんな簡単なことだったの……? 思わず頭をそう過ぎったが、思い直した。
これは、相手が皐だからだ……皐が、簡単なことにしてくれた。
難しく思えることも、一緒に考えれば軽くなるのかな……。

頭の中に思いが巡った時、皐が前のめりになり、唇を重ねた。
何度も何度も、離れては口づける。
背中を強く抱き締めた。

「ふ……」

ただ目の前の幸せに、酔いしれた。
もう怖さは湧き上がっては来なかった。

信じるってこういうことなのだろうかと、心の奥からゆっくりと浮かび上がった。

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