例えば危ない橋だったとして
この週末皐は、前々から高校の同級生と泊まりでスノーボードに行く約束をしていたらしく、わたしの家への訪問はその次の週末でお父さんとお母さんに提案してみた。
「どんな子が来るのかしらー! おしゃれしなくっちゃ!」
「わかった、家に居るようにするよ」
お母さんは妙な方向へ気合いを入れ出し、お父さんは落ち着いた笑顔で新聞から顔を上げた。
わたしはこの週末は特に予定がなく、ベッドでごろごろしながら先日購入した小説を読んで過ごした。
しかし夜を迎えると、何となしに落ち着かなくなって来るのだった。
今頃、皐はどうしてるのかな……。
男の子だけの旅行だって言ってたけど、本当だよね……。
微かに心がざわつき、部屋のローテーブルの上で静かに黙っている携帯を見つめた。
突如、声を聞きたい衝動に駆られた。
こんなのおかしい、と過る。
仕事で毎日毎日顔を合わせていながら、たった1日離れただけで寂しくて堪らないなんて。
電話なんて、したことないし……。
前の彼氏と付き合ってた時だって、ほとんどしたことなかったのに。
時刻は22時半。どんちゃん騒ぎで盛り上がっている頃かも。
こんな時間に電話なんか掛かって来たら、鬱陶しいに違いない……。
思いあぐねていると、電話が鳴り響いた。