例えば危ない橋だったとして
リビングへと促し、皐がお父さんに挨拶している間に、お母さんが後ろから小声で興奮気味にまくし立てた。
「ちょっとあんたっ! あんなイケメンッどうやって落としたの!?」
「落としたって……その言い方やだなー」
お母さんがお茶を淹れている最中、お父さんと3人でテーブルに向かい合った。
大丈夫なの? このシチュエーション……冷や汗をかいていると、お父さんが口を開いた。
「一千果は落ち着きがなくて、大変でしょう」
「ちょっ……落ち着きなくて悪かったわねぇ!」
反撃すると、皐が穏やかに微笑んで答えた。
「そんなことはありません。いつも一生懸命な一千果さんに、元気を貰っています」
思いがけない台詞が飛び出し、お世辞だとしても嬉しかった。
皐の言葉に頬を赤らめていると、お父さんが更に続けた。
「そうですか……一緒に働いているんでしたっけ」
「はい、元々僕の居た部署に一千果さんが異動して来られたんです」
「一千果はちゃんと仕事してますか? へまをしてないか、心配でねぇ……」
「とても仕事熱心で、覚えも早いので助かっています」
困ったように微笑むお父さんに、皐は丁寧に返事をしてくれる。