例えば危ない橋だったとして
お母さんがコーヒーをテーブルに並べながら、わたし達に向かってにっこりと笑った。
「安心したわ、こんな頼もしい人が彼氏になってくれて。黒澤さんなら、一千果じゃなくても良い人がいくらでもいるでしょうに」
「……いいえ、僕には……一千果さんはもったいないくらいです……」
さすがに照れたのか、話しながら皐の頬が染まったのが見て取れた。
わたしも顔が熱くて、首元に手を当てがった。
しばらく談笑したのち、皐がトイレに立った隙にお父さんが言う。
「良かったな、一千果」
優しく微笑むふたりに、胸がいっぱいになった。
どうやらお父さんとお母さんを安心させられたようだ。
緊張が緩み、わたしも笑顔を返した。
皐とわたしの部屋へ移動した。
彼はラグに腰を下ろすなり、天井を仰いで息を吐いた。
「あぁ……緊張したー」
「お疲れさまー」
「大丈夫だったかな、俺……」
「めちゃくちゃしっかり答えてたよ? びっくりするくらい」