例えば危ない橋だったとして

皐が物珍しそうに部屋を見渡して、呟いた。

「可愛らしい部屋だな」
「そう?」

わたしは思い出して立ち上がり、本棚に手を伸ばした。

「そうそう、あの小説読み終わったからさ……」

単行本を手に取り振り返ると、何やら一点に視線を注いでいる。
……ん?

視線の先に目を移すと、ディスプレイシェルフの最下段に、透明のフィルムでラッピングされた塊……まるで置物か何かのように空間に溶け込んでいる、ウイスキーの瓶があった。

しまったー!!
何となしに空いているスペースに置いたまま、あまりにも目に馴染みすぎて、片付けるのを忘れていた代物だ。
地味にクリスマス仕様のリボンの付いたシールが、左上に貼られている。

「これ何?」

皐が手を伸ばしかけた瞬間、駆け寄ったが一歩遅かった。
瓶を手に取り、まじまじと眺めている。

「ウイスキー、飲まないよね……」
「……貰ったの」

「本当に? ……何で慌ててるの?」

笑顔で誤魔化そうと試みたが、鋭い眼差しが突き刺さる。

< 184 / 214 >

この作品をシェア

pagetop