例えば危ない橋だったとして

翌週の土曜日、持っている中で一番綺麗めなワンピースに身を包み、今度は皐の家へやって来た。

お父さんが玄関先で出迎えてくれ、挨拶をする。

「こんにちは、榊一千果と申します」
「あ、やっぱり皐の彼女だったんですね。通夜の時はありがとうございます」

色っぽいお父さんが、微笑んでくれる。

持って来たお菓子を仏壇に供えて貰い、線香を上げさせて頂いた。
通夜の時は動転していてあまりじっくりと見られなかったが、微笑むお母さんの遺影は、とても綺麗で優しそうな表情をしている。

「皐の彼女が線香上げてくれるなんて、喜んでると思いますよ」

お父さんが、皐と同じことを言う。


そこへ、廊下を弟さんが通り掛かり、皐が呼び止める。

「蓮、挨拶して」

弟さんは間近で見るのは初めてだが、やはり綺麗な顔立ちをしている。
お互いに名乗り挨拶を交わすと、じっと見つめられた。

「……兄さんのこと、よろしくお願いします」
「は、はい」

まだ大学生だという彼は、アルバイトへ出掛けて行った。
蓮くんの姿は、入社した頃の皐を彷彿とさせた。

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