例えば危ない橋だったとして
わたしを抱き締めていた腕がするりと解かれ、ベッドに腰掛けそのまま横たわった。
「その話は、本当にかっこ悪いから……」
「……わたし、かっこ悪い皐も好きだと思うよ」
一緒に横たわり目線を合わせた。
「言いたくないなら、無理には聞かないけど……」
皐は真顔のままわたしを見つめた後、瞼を閉じた。
「……まぁ、何てこともない話だけど……ガキの頃、叔母さんが話してるの聞いちゃってさ。母さんは、好きでもなかった父さんと、親の都合で結婚したって……。その時は子どもだったし、俺の存在って何だよって、ショックだった……」
綺麗な顔が、僅かに眉間を寄せ歪む。
「……本人が言ったわけじゃないし、確かめる勇気もなかったし、今となっては真相は闇の中だけど……」
わたしは、皐の闇を包み込みたくて、彼の頭を抱き締めた。
皐の手が背中に回される。
「……あったかい。安心する……」
彼の吐息が胸元にかかる。
胸が熱く、高揚して行くのを感じ取った。