例えば危ない橋だったとして
前回のデートの時と同じ場所で落ち合った。
今日は花柄のタイトスカートを履いてみた。
バレンタインなので、精一杯可愛くして来たつもりだが、皐も今日は一際格好良かった。
ショートブーツを履きこなしている。
皐がわたしの手を取って歩き出した時、視線は外したまま少し照れ臭そうに漏らした。
「……そういうのも良いね。ちょっと大人っぽくて」
わたしも照れ臭かったが、笑顔を返した。
「皐はブーツがかっこ良いね。初めて見た、そういう格好」
はにかんだ皐の表情が、可愛らしかった。
今日は、皐が店を予約してくれていた。
隠れ家的なビストロに連れて来てくれた。落ち着いた雰囲気の素敵なお店だ。
席に着きドリンクを注文すると、皐がメニューに視線を落としながら口にする。
「今日は、金のこと気にすんなよ」
「……いつも多めに出してくれてるのに?」
「一千果と最初のイベントだから、かっこ付けさせてよ」
わたしに視線を移し、柔らかく笑う。
皐の気持ちがすごく嬉しかった。
だけど、若干心配になってしまった。
お互い実家なので致し方ない部分はあるだろうが、わたし達のデートにお金が掛かっているのは、自覚している……。
きっとこの好意を受け取ることが、男の人を立てるということなのかな……漠然と頭を巡らせながら、笑顔を零した。