例えば危ない橋だったとして

「はーお腹いっぱい。美味しかった~ワイン煮のお肉、ほろほろで」
「ほんと美味かった。また来たいな」

店の外へ出ると一層宵が深まっており、真冬の今、吹き付ける風が凄まじく冷たい。
身に凍みる寒さに紛れて、皐の腕に抱き着いた。

「ご馳走様でした」

口に出して見上げると、彼はとても優しい笑顔を浮かべていた。


ふたりきりになったら渡そうと思っていたので、ベッドに腰掛け落ち着いてから、昨夜作ったチョコレートの箱を取り出した。

「はい、美味しいかわからないけど」
「……手作り?」

目を輝かせた皐の反応に、照れつつも頷く。
彼は早速箱を開け、一粒口に含んだ。

「美味いよ」
「良かった」

「ありがとー」

気恥かしそうに、わたしの口にもチョコレートを運ぶ。
漂う雰囲気も口の中も、甘過ぎてわたしも恥ずかしかった。


「此処座って」

皐が足の間を、ぽんと叩いた。
その仕草に、胸がときめく。

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