例えば危ない橋だったとして
熱と秘め事
短い2月も残すところ10日を切った。
わたしは変わった依頼内容に首を傾げていた。
“電柱昇柱の際、苦情が出た為『近隣住民へ工事3営業日前までにPR要』と特記欄に入力希望”……
「黒澤くーん、相談」
わたしは椅子に座ったまま、皐の側に寄った。
提示した打ち出しに、彼が目を通す。
「このPRって誰がするの? 協力会社?」
「多分ね、そこは営業に確認して入力内容に組み込んだ方が良い」
「住所画面の特記だけじゃなくて、設備画面にも入力するべきだよね? この画面は協力会社向けだから、文言は元のままで良い?」
「それでいいよ」
「この住所の電柱、国道西 47号柱が括り付いてる登録全てに入力したら良いよね?」
「うん、大変なら手伝うけど」
「大丈夫、ありがとう」
顔を上げ微笑むと、皐がじっとわたしを見つめている。
「……何かまずかった?」
「……いや、ずいぶん勘が働くようになったんだなと思って。やっぱり榊は覚えが良いよ」
「そりゃあ、黒澤くんの指導が良いですから」
「……もう俺が付いてなくても、何とでもなりそうだな」
おどけて返したのに、皐は真顔で瞼を伏せた。