例えば危ない橋だったとして
それ以来、皐の態度が変わった。
仕事では最低限の会話しか交わさず、仕事以外でも連絡が来ない。
元々毎日会っているから、そんなに密に連絡は取り合っていなかったが、全くないというのは付き合って以降初めてのことだった。
連絡を取らなくなり3日目、金曜日を迎えた。
わたしはやや落ち着きを取り戻して来ていた。
あの日、皐はおかしかった。
やはり何かあったのだろうか。
確かにあの日は戸惑いや悲しさが勝って泣いてしまったが、今はそれよりも皐が心配だ。
しかし避けられている今、話を切り出すには勇気が要った。
とりあえず、極力笑顔で皐に接しようと考えた。
来週には2月も終わり、3月を迎える。
3月末で市村さんが定年退職される為、有休の消化が始まっており、休みが目立って来た。
たまたま受けた電話が発注部門の田浦さんからで、内容は市村さんが担当している設備構築の件だった。
休みであることを伝えると、田浦さんから質問を投げ掛けられた。
「工期遅れてて4月に入りそうなんですー。4月以降どなたが担当されるかって決まってますか?」
引き継ぎについては、わたしは何も聞いていない。
躊躇いつつも、皐に声を掛けてみた。
「黒澤くん、田浦さんから掛かってるんだけど、市村さんの後任誰かって聞かれてて……」
笑顔を向けたが、こちらに視線を移した皐の表情は冷ややかだった。
「……知らない。そんなこと課長か係長に聞いてよ。何でもかんでも俺を当てにすんな」