例えば危ない橋だったとして

……と、思ってはみたものの……。

「疲れる……」

わたしはげっそりとした顔で、消え入るような声を零しながら、デスクに突っ伏した。
昼休み、自席でお弁当を食べたり、足取り軽やかにランチに出かけて行ったり、皆それぞれの時間を楽しんでいる。
わたしはうなだれたまま、買って来ていたパンの袋を開ける。

「そんなに忙しかった?」
「営業さんがやかましくてね……」

背後からの問い掛けに、何の気なしに答えた。
違和感を感じ、おもむろに振り返ると、件の黒澤くんが缶コーヒーを啜っている。

「もう食べて来たの?」
「今日は食堂空いてた」

席に着いた黒澤くんを目の端に捉えながら、四六時中隣に居るんだから、昼休みくらい解放して欲しいと考えてしまった。
仕事中はスイッチをオンに切り替えられるが、オフにしている休憩時間、気を抜くと意識してしまう。
頭の中に蘇ってきた先日のキスを、掻き消そうと努力した。
自分が変な顔をしていないか心配だ。

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