例えば危ない橋だったとして
更ちゃんと飲んだ翌日、気怠さを携えながら仕事を始めた。
木曜日なので比較的、依頼量は少なくて助かった。
しかし、その分黒澤くんに仕事を教わる時間が増えるものだ。
「この依頼、イベント用の臨時で1日だけ使うみたいなんだけど、去年も同じ場所って書いてるけど、登録がなくて」
「番地が違うってことかな」
黒澤くんが画面を覗き込みながら答える。
「電柱がわかってれば検索出来るけどね」
「敷地広過ぎて全然わからない」
わたしは地図と線路図面を交互に睨みながら返した。
「多分去年工事照会出してると思うから、資料探してみようか。資料室にあると思う」
「資料室ってどこ?」
「隣」
黒澤くんは立ち上がると、係長に声を掛け、鍵を持って戻ってくると、わたしに着いてくるよう手招きした。
初めて入る小さな資料室は、窓が無いため暗く、ファイルがずらっと並べられた棚と、隅には小さな机と椅子が置かれ、打ち合わせスペースも兼ねられていた。
「俺も久しぶりに来たわ」
電気のスイッチを入れながら黒澤くんがつぶやく。
「どこにあるか忘れた。探して、去年の10月工事照会」