例えば危ない橋だったとして
うろたえて駆け寄り、スーツの裾を掴んで勢いよく叩いた。
するとスーツが震えているので見上げると、黒澤くんが口を手で覆って笑いを堪えていた。
「……必死過ぎでしょ」
堪えきれないというように、吹き出す。
「なっ! そんな笑うことないでしょー!? 人が心配して……」
「別にちょっと裾汚れたくらいで……はははっ」
「だって、黒澤くんのファンにわたしが不信がられる。一緒に出て来たし」
拗ねたように唇を突き出すと、黒澤くんはまだお腹を抱えている。
「何それ、何の心配? ははははっ」
黒澤くんが、片眉を下げて笑っている。
こんな顔をするんだと、驚いた。
「……仮面、外れた……?」
驚いた表情のまま零すと、黒澤くんはぴたりと動きを止め、目を見開いた。