例えば危ない橋だったとして
落ち着いて、わたし。
恋はしないって、決めたんでしょ?
黒澤くんは、わたしの反応を見て楽しんでいる可能性もあるわけだし。
相手を落とすことに、意識を割いて……。
ぐっと握った手は、汗ばんでいる。
視線を落して、溜息を吐いた。
頭の中で、チカチカと光が点滅している感覚がする。
心からの警告のごとく。
考える隙を奪うように、わたしの唇に黒澤くんの唇が覆いかぶさって来た。
欲しくて堪らないというような、熱く甘いキス。
面食らっているうちに、勢いを増す。
またたく間に絡まり合う舌に、身も心も溶けてしまいそうな気持ちになる。
黒澤くんの手が、わたしの肩に回される。
もう、抗えない──
わたしは夢中でキスに溺れた。
衝動的に、黒澤くんの背中に腕が回されている。
スーツをぎゅっと握った。
いつの間にか、黒澤くんのもう一方の手は、わたしの腰に添えられた。
何分経ったかわからない。
朦朧としそうな意識の中で、身を任せた。
もう、後戻りは出来ない。
危ない橋を、渡ってしまった──