例えば危ない橋だったとして
目が合って、心臓が鳴り始める。
混乱気味の頭を懸命に回転させた。
此処は守りに入るよりも、敢えて攻めて、現状打破を図るべき!?
でも、危険じゃないか!?
「あっあのさぁ……!」
黒澤くんは黙ったまま目線を合わせ、わたしの次の言葉を待っている。
「この後、時間ある!?」
少し驚いた顔をした後、さっと鞄をまとめドアに向かって踏み出した。
「行こ」
微笑んでそう一言だけ返し、出て行ってしまう。
わたしは急いで彼の後に続く。
声を掛けたのはわたしなのに、黒澤くんは足早に駅方面へ向かって行くので、少し戸惑った。
見上げると、その横顔は何処か嬉々としているようだった。
まるで鼻歌でも歌い出しそうな……ご褒美を貰った小学生のような顔だと思った。
まさか、わたしに誘われたのが嬉しくて……?
嘘でしょ??
そんな可愛い態度取られたら、無下に出来なくなってしまう。
わたしは熱くなって来た顔を隠すように俯いて歩いた。