例えば危ない橋だったとして
「……俺が悪いよな。ごめんな。勝手だったから、不安にさせたよな」
また、切なそうな瞳が、わたしを見つめる。
わたしは何故だか、目頭が熱くなって来ていた。
そして何故だか、俯いて首を横に振っていた。
「……あの、黒澤くんは……」
わたしのこと、どう思ってるの?
絞り出そうとした言葉は、それ以上声にならず、飲み込んでしまった。
「……榊。場所、変えない? この距離だと表情が見えない」
店を出て、5分程の場所にある個室の居酒屋へ入った。
個室ではあるけれど、薄い壁で仕切られているだけで、店内は適度にざわついている。
相手の声が聞こえない程ではなく、静か過ぎず、話をするには調度良い。
だけど、この部屋は狭過ぎる。
わたし達は、正方形のテーブルの角を挟んで、隣に腰を下ろした。
膝同士が触れそうなくらい、近い。
わたしは頭がおかしいのかもしれないと思った。
こんな所へのこのこ着いて来たのは、自分が何かを期待しているように思えた。