例えば危ない橋だったとして
黒澤くんの、唇の、舌の温度が伝わってくる。
あっと言う間に黒澤くんが倒れ込んで来て、わたしの身体はソファに沈められた。
頭上からは隣の部屋の人達の楽しそうな話し声。
わたし達はその口を、話をするためでなく、お互いの感触を確かめ合うために使っている。
「んぅ……」
我慢していたのに、思わず声が漏れ出てしまう。
黒澤くんの舌が、激しく甘く絡み付く。
とうに戻れるはずなんて、なかった。
3回目のキスをした時、この人の引力に抗えないと思ったのに、どうして戻れるかもなんて、考えたんだろう。
黒澤くんの背中にしがみつきながら、僅かに涙が滲んだ。
少しの後悔と、甘く堕ちて行く自分
何も考えず、何の心配もすることなく、このまま溺れられたら良いのに。
しばらくお互いを求め合った後、唇が離れて、彼の荒い息が耳元に掛かり、ぴくっと身体を震わせた。
恐る恐る彼の顔に目を向けると、その恍惚とした表情がとても色っぽくて、見惚れた。
頬に手を伸ばしたその時、彼の携帯が鳴った。