例えば危ない橋だったとして
漂える波のような
家へ帰り着き、ベッドに横たわって天井を見つめ、呆けていた。
あまりに色々なことがありすぎて、頭が混乱している。
黒澤くん、大丈夫だろうか。
あの後駅前で別れ、静かに歩いて行く黒澤くんの後ろ姿を見送った。
心配と同時に、不安が押し寄せて来た。
わたしなんかが黒澤くんの側に居て良いのだろうか……?
何かお家が大変そうな時に、わたしのようなよくわからない存在は、足でまといでは……?
わたしは本当、人の役に立たないな。
溜息を吐いて、顔の上に腕を乗せ、光を遮った。
今日の黒澤くんとのやり取りを、詳細に思い出す。
黒澤くんが、真剣にわたしとの関係を考えてくれていることが伝わって来た。
わたしの心を気遣いながらも、自分の意思も伝える、その姿勢に真実味を感じた。
彼は完璧星人なんかではなく、生々しい1人の男性だった。
唇を触って、彼とのキスを思い描いた。
わたし今日は……触れたくてたまらなかった。
だけどそれは、黒澤くんのことが好きだからなのか。
場の雰囲気に流されただけじゃないの?
……まだ、確信が持てない。
それに、仮に彼を好きになったからと言って、本当に、わたしに恋愛が務まるのだろうか。
仕事との両立が出来るだろうか。