例えば危ない橋だったとして
20分程電車に揺られ、黒澤くんが降りることを目で示した。
駅を出て歩くこと数分。
黒澤くん、何処へ向かってるんだろう……?
不安に感じ始めた頃、目の前に現れたのは、水族館だった。
すっかり日も暮れて、宵闇が深まるこの時間、建物はライトアップされて、美しく光っていた。
「……綺麗」
「そうだな」
こんなロマンチックな所へ連れて来るなんて……胸が高鳴ってしまう。
黒澤くんを見上げると、光るライトに照らされて、とても格好良かった。
「行こう」
黒澤くんが先導して、夜のチケットを購入し、わたしに手渡した。
「お金……」
「いいから、そんなん」
鞄を探ろうとした手を取られて、そのまま黒澤くんの手に握られた。
うわ……っ、手繋いじゃった……。
掌の熱から、お互いに緊張している雰囲気が伝わって来た。
わたしは気付けば、もう片方の手でニットの袖口を掴みつつ、口元へ添える仕草をしていた。
黒澤くんを盗み見ると、彼もバツが悪そうに、頭を掻いている。
……何だこれは? もう何回もキスしてるのに、こんな中学生みたいな……。
ドキドキして、小さく溜息が漏れた。