例えば危ない橋だったとして
普段なら何かをしている最中であったりして「後で」などと答えるものだが、特に拒否する理由もなかったので、大人しくリビングへ降りた。
それに今日は多分、お母さんはわたしを気遣ってくれているに違いない。
キャラメルプリンは、わたしの一番好きなスイーツだから。
丁寧に紅茶まで淹れてくれた。
紅茶を少し啜った後、プリンをすくって口へ運んだ。
「……美味しい」
「此処のキャラメルプリン、いつ食べても美味しいわよねー」
お母さんがにっこりと笑った。
不覚にも、僅かに目頭が熱くなってしまった。
「……今日は、何だか苦い気がする」
「そう? そりゃあキャラメルだから多少は」
何だかわたしの心の様相を反映しているかのように思えた。
黒澤くんが頭に浮かぶ。
そして、黒澤くんにとっては、こんなお母さんの存在が覆ってしまっていることも、思った。
黒澤くんは今何をしているだろう。
どんな気持ちで過ごしているだろう。
もうどうにもならないのかな……。