マザコン彼氏の事情
始業のベルが鳴った。
龍くんからもらった薬が効いて来たのか、真保ちゃんは頑張って電話を取っている。
わたしも人の心配をしている場合じゃないくらい忙しくなった。
うちの会社は、午前中が特に忙しい。
日によってはトイレに立つのもままならない事もある。
「岡嶋さん、三番出て」
「わかりました」
ひとつ前のお客様の受注入力をしたいのに、もう次の電話に出ている。
それを切ると、まってましたとばかりに違う回線が光った。
ちょっとちょっと頭がこんがらがっちゃうよ。
かなり集中しないとヤバい。
入力ミスは、他の部署にも迷惑を掛ける事になるから。
「ごめん真保ちゃん、ちょっとトイレ行かせて」
「どうぞどうぞ」
我慢が出来なかったわけではなかったけれど、ちょこっとだけ休憩させて。
トイレから出た所で、龍くんと会った。
「今日も忙しそうだね」
「かなりね。あっ、ありがとね。真保ちゃんだいぶん良くなったみたいよ」
「良かった」
「ごめん、もう行かなきゃ」
「ああ。それじゃ、出かけて来るよ」
「いってらっしゃい」
それだけ言うと、小走りにオフィスに戻った。
席に座るとすぐに電話が鳴る。
落ち着けわたし。
焦るとそれがミスにつながる。
ふう。
また注文だ。
受注入力に発注業務。
電話を取るだけならどんなに楽か。
それでもまだ、前の会社よりかは良い。
人間底を見ると、あとは何でも耐えられる気がする。
処理が終わったのは、十二時半を過ぎた頃だった。
今日は休みが三十分しか無い。
だけど、今処理しておかないと午後の仕事に影響が出そうだった。
真保ちゃんは、お昼を買いに行っている。
まだ食欲は無いので、ヨーグルトでも買って来ると言って近くのコンビニに出掛けた。
わたしも同じものを頼んだ。
彼女を待つ間に、午後からが少しでも楽なようにとやれる事は前倒しで処理した。
「ただいま」
「おかえり。ごめんね、ありがと」
「これでいいですか?」
「うん」
真保ちゃんと同じヨーグルトを、並んでデスクで食べた。
わざわざ食堂に行く事もないから。
「重見さんって本当に優しいですよね」
「そうね」
「マザコンでなければ、もっとモテるはずなのに。あ、ごめんなさい。もうモテる必要は無いんだった」
「またマザコンって言う」
「ごめんなさい。もらった薬良く効きました」
「それは良かった」
「わたしも同じ物買おうかな?」
「真保ちゃんってお酒好きなのね」
「普段は昨日みたいに飲みませんよ。昨日は楽しかったから」
「ありがとう。そうだ。今度うちで一緒に飲まない? そのまま泊まってもいいし」
「ホントですか? だったら思いっきり飲めますね。ただし、金曜日の夜に限るって感じ?」
「そうね。休みの前の日にしましょう」
「楽しみが増えちゃった」
真保ちゃんは嬉しそうにしていた。
龍くんからもらった薬が効いて来たのか、真保ちゃんは頑張って電話を取っている。
わたしも人の心配をしている場合じゃないくらい忙しくなった。
うちの会社は、午前中が特に忙しい。
日によってはトイレに立つのもままならない事もある。
「岡嶋さん、三番出て」
「わかりました」
ひとつ前のお客様の受注入力をしたいのに、もう次の電話に出ている。
それを切ると、まってましたとばかりに違う回線が光った。
ちょっとちょっと頭がこんがらがっちゃうよ。
かなり集中しないとヤバい。
入力ミスは、他の部署にも迷惑を掛ける事になるから。
「ごめん真保ちゃん、ちょっとトイレ行かせて」
「どうぞどうぞ」
我慢が出来なかったわけではなかったけれど、ちょこっとだけ休憩させて。
トイレから出た所で、龍くんと会った。
「今日も忙しそうだね」
「かなりね。あっ、ありがとね。真保ちゃんだいぶん良くなったみたいよ」
「良かった」
「ごめん、もう行かなきゃ」
「ああ。それじゃ、出かけて来るよ」
「いってらっしゃい」
それだけ言うと、小走りにオフィスに戻った。
席に座るとすぐに電話が鳴る。
落ち着けわたし。
焦るとそれがミスにつながる。
ふう。
また注文だ。
受注入力に発注業務。
電話を取るだけならどんなに楽か。
それでもまだ、前の会社よりかは良い。
人間底を見ると、あとは何でも耐えられる気がする。
処理が終わったのは、十二時半を過ぎた頃だった。
今日は休みが三十分しか無い。
だけど、今処理しておかないと午後の仕事に影響が出そうだった。
真保ちゃんは、お昼を買いに行っている。
まだ食欲は無いので、ヨーグルトでも買って来ると言って近くのコンビニに出掛けた。
わたしも同じものを頼んだ。
彼女を待つ間に、午後からが少しでも楽なようにとやれる事は前倒しで処理した。
「ただいま」
「おかえり。ごめんね、ありがと」
「これでいいですか?」
「うん」
真保ちゃんと同じヨーグルトを、並んでデスクで食べた。
わざわざ食堂に行く事もないから。
「重見さんって本当に優しいですよね」
「そうね」
「マザコンでなければ、もっとモテるはずなのに。あ、ごめんなさい。もうモテる必要は無いんだった」
「またマザコンって言う」
「ごめんなさい。もらった薬良く効きました」
「それは良かった」
「わたしも同じ物買おうかな?」
「真保ちゃんってお酒好きなのね」
「普段は昨日みたいに飲みませんよ。昨日は楽しかったから」
「ありがとう。そうだ。今度うちで一緒に飲まない? そのまま泊まってもいいし」
「ホントですか? だったら思いっきり飲めますね。ただし、金曜日の夜に限るって感じ?」
「そうね。休みの前の日にしましょう」
「楽しみが増えちゃった」
真保ちゃんは嬉しそうにしていた。