マザコン彼氏の事情
「ごめんね。二人でお茶出来なくて」
「いいんです。岡嶋さん、初めて会ったのに、重見さんのお母さんと気が合ってましたね」
「うん。とっても話しやすい方だった」
「……」
「どうかした?」
「俺が入り込める隙間は無いかなと思って」
「えっ?」
「重見さんからあなたを奪ってやるって意気込んでいたんですけど諦めます」
「栗原くん……」
「だけど、会社では良きパートナーとして宜しくお願いしますね」
「もちろんよ。ねえ、真保ちゃんの事、考えてみてくれない?」
「吉田さんですか?」
「うん」
「そうですね。前向きに考えてみます」

 良かった。
 どうか二人が上手くいきますように。

「それにしても重見さんのお母さんって、面白い人でしたね。日曜日、俺まで誘ってくれたりして。でもまさかあそこで行きますなんて言えないですよ。重見さんの顔が段々怖くなってたし」


 栗原くんとは駅で別れ、夕食の買い物を済ませて家に帰った。
 今日は楽しかった。
 会えないと思っていた龍くんにも会えたし、おまけに来週は龍くんのお宅にお邪魔する事が出来る。
 出掛けて良かった。
 昨日みたいに家にこもっていたら、誰にも会えなかったもの。
 でも、栗原くんには悪い事しちゃったかな。
 わたしにとっては良い方向に話が流れたけど、栗原くんはわたし達の中に入るのって嫌だったよね。
 
「よし、作ろう」

 夕食は肉じゃがとお味噌汁。
 それから、お惣菜コーナーで二割引きになっていたポテトサラダ。
 肉じゃがは多めに作って明日のお弁当に入れよう。

< 27 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop