マザコン彼氏の事情
何だろう。
心がざわつく。
このまま仕事出来るかなぁ。
わたしは昔から、何か心配事があると気持ちが上の空になる癖がある。
その癖が久しぶりに出そうだ。
「真保ちゃん、わたしちょっと電話して来るね」
「はい。いってらっしゃい」
始業時間まであと十分。
わたしは非常口の扉を開けた。
「あ、もしもしお母さん?」
『あら、くるみちゃん? こんなに朝早くからどうしたの?』
「お母さん、入院されてる方って、お父さんでしょ?」
『えっ? どうして知ってるの? わたし、話したかしら?』
「龍くんです。こないだお昼に家に戻ったら、出掛けるお母さんに会ったって」
『ああ……えっ? あの子、入院してるのが父親だと気づいてるの?』
「ううん、はっきりとは。でも何か疑っちゃって、わたしに聞いてくれって頼んで来たの」
『……そう』
「わたし、何て言ったら?」
『まだ黙ってて。今度の日曜日、あなたがうちに来てからあの子に話すわ。あの人ね、いよいよ限界が近づいてるって』
「そんな……」
『だからね、あの子が恨んでるのは知ってるけど、最後にあなたと二人で顔を見せてあげて欲しいのよ』
「わたしも会いたい。龍くんのお父さんに」
始業三分前。
営業デスクでは上司を囲んでミーティングがあっていた。
これからわたしも掛かって来る電話を取らなくてはいけない。
次に龍くんに聞かれるとしても、お昼休みより後のはず。
その頃には、仕事モードになって忘れてるかもしれない。
「くるみ、聞いてくれた?」
あ~、やっぱり忘れて無かったよ。
わざわざ昼休みに戻って来てまで聞く?
この人、思っていた以上にしつこいタイプかもしれない。
「教えてくれなかった。でもね、今度の日曜日にわたしが家に行ってから話すって。だから、龍くんもそれまで待ってて」
「そう・・・」
納得した?
それとも、考えていた事がますます現実味を帯びた?
たぶん龍くんは、入院してるのがお父さんって気づいてる。
そんな気がするよ。
心がざわつく。
このまま仕事出来るかなぁ。
わたしは昔から、何か心配事があると気持ちが上の空になる癖がある。
その癖が久しぶりに出そうだ。
「真保ちゃん、わたしちょっと電話して来るね」
「はい。いってらっしゃい」
始業時間まであと十分。
わたしは非常口の扉を開けた。
「あ、もしもしお母さん?」
『あら、くるみちゃん? こんなに朝早くからどうしたの?』
「お母さん、入院されてる方って、お父さんでしょ?」
『えっ? どうして知ってるの? わたし、話したかしら?』
「龍くんです。こないだお昼に家に戻ったら、出掛けるお母さんに会ったって」
『ああ……えっ? あの子、入院してるのが父親だと気づいてるの?』
「ううん、はっきりとは。でも何か疑っちゃって、わたしに聞いてくれって頼んで来たの」
『……そう』
「わたし、何て言ったら?」
『まだ黙ってて。今度の日曜日、あなたがうちに来てからあの子に話すわ。あの人ね、いよいよ限界が近づいてるって』
「そんな……」
『だからね、あの子が恨んでるのは知ってるけど、最後にあなたと二人で顔を見せてあげて欲しいのよ』
「わたしも会いたい。龍くんのお父さんに」
始業三分前。
営業デスクでは上司を囲んでミーティングがあっていた。
これからわたしも掛かって来る電話を取らなくてはいけない。
次に龍くんに聞かれるとしても、お昼休みより後のはず。
その頃には、仕事モードになって忘れてるかもしれない。
「くるみ、聞いてくれた?」
あ~、やっぱり忘れて無かったよ。
わざわざ昼休みに戻って来てまで聞く?
この人、思っていた以上にしつこいタイプかもしれない。
「教えてくれなかった。でもね、今度の日曜日にわたしが家に行ってから話すって。だから、龍くんもそれまで待ってて」
「そう・・・」
納得した?
それとも、考えていた事がますます現実味を帯びた?
たぶん龍くんは、入院してるのがお父さんって気づいてる。
そんな気がするよ。