マザコン彼氏の事情
「気にしてたって事は、薄々感づいてたって事でしょ?」
「……くるみも、知ってたの?」
「えっ?」
「知ってたんだな?」
こくんと頷く。
「そうか、知ってて黙ってたんだ」
「ごめん」
「くるみ、僕たち、別れよう」
「龍くん?」
どういう事?
今、別れるって言った?
「僕に隠し事をする人なんか、もう信じられない」
「龍、くるみちゃんに黙ってて言ったのはわたしよ。くるみちゃんは悪くないわ」
「それでも僕に言うべきだ。悪い、もう帰ってくれ」
「龍、だったらお母さんも捨てなさい」
「母さん?」
「くるみちゃんの事が信じられないんだったら、お母さんの事もでしょ?」
「ああ、母さんの事も信じられないよ。だけど、母さんとは血がつながってるんだ。そう簡単には別れられない」
その言葉に胸が苦しくなる。
ぎゅっと締め付けられるように苦しい。
痛い。
心が痛い。
涙が溢れ出した。
大人になって人前で泣いた事って無かったのに、心が痛くてどうしようもない。
「龍! 何て事言うの? くるみちゃんを傷つけないでちょうだい。お母さん、くるみちゃんの事、本当の娘だと思ってるわ」
お母さんが抱きしめてくれる。
お母さん、わたし、苦しいよ。
「だったらくるみと暮らせよ。僕が出て行く」
「龍くん待ってよ。龍くんの気持ちはわかるよ。でも、お父さん、腎臓移植しなかったら、このままにしてたら死んじゃうんだよ。さっきお母さんの事、血がつながってるからそんなに簡単に別れられないって言ったよね。だったらお父さんも一緒でしょ?」
「親父は違う。あの人は、僕たちを捨てて出て行ったんだから」
「違わない! 出て行ったとしても、龍くんにとって、たった一人のお父さんなんだよ」
「……」
「いいわ。わたし帰る。だけど、絶対お父さんに会って。そうしないと絶対後悔するから」
「くるみちゃん……」
「お母さん、今までありがとう。お母さんに出会えて良かった。本当の母みたいに接してくれて嬉しかった。良い思い出をありがとう。さようなら」
「待って、くるみちゃん」
涙で前が見えない。
それでもわたしは後ろを振り向かずに逃げるように坂道を下った。
「……くるみも、知ってたの?」
「えっ?」
「知ってたんだな?」
こくんと頷く。
「そうか、知ってて黙ってたんだ」
「ごめん」
「くるみ、僕たち、別れよう」
「龍くん?」
どういう事?
今、別れるって言った?
「僕に隠し事をする人なんか、もう信じられない」
「龍、くるみちゃんに黙ってて言ったのはわたしよ。くるみちゃんは悪くないわ」
「それでも僕に言うべきだ。悪い、もう帰ってくれ」
「龍、だったらお母さんも捨てなさい」
「母さん?」
「くるみちゃんの事が信じられないんだったら、お母さんの事もでしょ?」
「ああ、母さんの事も信じられないよ。だけど、母さんとは血がつながってるんだ。そう簡単には別れられない」
その言葉に胸が苦しくなる。
ぎゅっと締め付けられるように苦しい。
痛い。
心が痛い。
涙が溢れ出した。
大人になって人前で泣いた事って無かったのに、心が痛くてどうしようもない。
「龍! 何て事言うの? くるみちゃんを傷つけないでちょうだい。お母さん、くるみちゃんの事、本当の娘だと思ってるわ」
お母さんが抱きしめてくれる。
お母さん、わたし、苦しいよ。
「だったらくるみと暮らせよ。僕が出て行く」
「龍くん待ってよ。龍くんの気持ちはわかるよ。でも、お父さん、腎臓移植しなかったら、このままにしてたら死んじゃうんだよ。さっきお母さんの事、血がつながってるからそんなに簡単に別れられないって言ったよね。だったらお父さんも一緒でしょ?」
「親父は違う。あの人は、僕たちを捨てて出て行ったんだから」
「違わない! 出て行ったとしても、龍くんにとって、たった一人のお父さんなんだよ」
「……」
「いいわ。わたし帰る。だけど、絶対お父さんに会って。そうしないと絶対後悔するから」
「くるみちゃん……」
「お母さん、今までありがとう。お母さんに出会えて良かった。本当の母みたいに接してくれて嬉しかった。良い思い出をありがとう。さようなら」
「待って、くるみちゃん」
涙で前が見えない。
それでもわたしは後ろを振り向かずに逃げるように坂道を下った。