マザコン彼氏の事情
「そうそう。俺たちも岡嶋ちゃんが居なくなったら寂しいよ。それに、ここを辞めてどこ行くつもり? 次の仕事って言っても、そう簡単に見つからないよ」
それはそうだね。
ここに入るのも一苦労だった。
職安に何回通った事か。
「あいつの事は、空気と思え。それに、あいつの担当じゃないから、そう関わる事も無いだろ? 何かあったら俺に言ってくれればいいよ」
「真下さん、ありがとうございます」
「あ、もしかして俺の事、ちょっとは好きになってくれた?」
「はい。とっても良い先輩です」
「そっちか。まあいいさ。今まで通りの岡嶋ちゃんで居てくれたら」
真下さん。
今日、初めてあなたの事、カッコいいと思いましたよ。
ありがとう。
みんな良い人です。
「じゃ、出掛けるから」
「行ってらっしゃい」
自動販売機から出したコーヒーを片手に、真下さんは出掛けて行った。
龍くんも、わたしの顔が見たくないのか、午前中、いつ出て行ったのか気づかないうちに居なくなっていた。
そして、帰る時間になっても戻っては来なかった。
無事、失恋一日目終了。
この調子で、段々最初に出会った頃の関係に戻れるはず。
龍くん、お願いだから、お父さんに顔を見せてあげてね。
お母さんからは、今日五通のLINEが来ていた。
ごめんなさい。
お母さんとはこのまま親しくしたいけど、それじゃやっぱりいけないの。
だから、わたしから返事は送れない。
それから二週間が過ぎた。
会社では、目も合わせず、まったく会話もしていない。
真下さんが言ってくれたように、空気みたいな存在になっているのかも。
そして、更に二週間が過ぎた。
「おい栗原、今日お前、重見のとこ、フォローに回れ」
「了解です」
重見という言葉につい反応してしまった。
龍くん、今日休みなのね。
「栗原くん、重見さん病気?」
真保ちゃんの問いに、傍を歩いていた栗原くんが立ち止まる。
「お袋さんが倒れたらしい」
「えっ? お母さんが?」
お母さんが倒れた?
そう聞いていてもたってもいられなくなる。
だけど、もう行っちゃいけないよね?
「それじゃ、行って来る」
「うん。頑張って」
真保ちゃんに見送られ、栗原くんは出掛けて行った。
「岡嶋さん、大丈夫ですか?」
「うん……」
いや、大丈夫じゃない。
それはそうだね。
ここに入るのも一苦労だった。
職安に何回通った事か。
「あいつの事は、空気と思え。それに、あいつの担当じゃないから、そう関わる事も無いだろ? 何かあったら俺に言ってくれればいいよ」
「真下さん、ありがとうございます」
「あ、もしかして俺の事、ちょっとは好きになってくれた?」
「はい。とっても良い先輩です」
「そっちか。まあいいさ。今まで通りの岡嶋ちゃんで居てくれたら」
真下さん。
今日、初めてあなたの事、カッコいいと思いましたよ。
ありがとう。
みんな良い人です。
「じゃ、出掛けるから」
「行ってらっしゃい」
自動販売機から出したコーヒーを片手に、真下さんは出掛けて行った。
龍くんも、わたしの顔が見たくないのか、午前中、いつ出て行ったのか気づかないうちに居なくなっていた。
そして、帰る時間になっても戻っては来なかった。
無事、失恋一日目終了。
この調子で、段々最初に出会った頃の関係に戻れるはず。
龍くん、お願いだから、お父さんに顔を見せてあげてね。
お母さんからは、今日五通のLINEが来ていた。
ごめんなさい。
お母さんとはこのまま親しくしたいけど、それじゃやっぱりいけないの。
だから、わたしから返事は送れない。
それから二週間が過ぎた。
会社では、目も合わせず、まったく会話もしていない。
真下さんが言ってくれたように、空気みたいな存在になっているのかも。
そして、更に二週間が過ぎた。
「おい栗原、今日お前、重見のとこ、フォローに回れ」
「了解です」
重見という言葉につい反応してしまった。
龍くん、今日休みなのね。
「栗原くん、重見さん病気?」
真保ちゃんの問いに、傍を歩いていた栗原くんが立ち止まる。
「お袋さんが倒れたらしい」
「えっ? お母さんが?」
お母さんが倒れた?
そう聞いていてもたってもいられなくなる。
だけど、もう行っちゃいけないよね?
「それじゃ、行って来る」
「うん。頑張って」
真保ちゃんに見送られ、栗原くんは出掛けて行った。
「岡嶋さん、大丈夫ですか?」
「うん……」
いや、大丈夫じゃない。