マザコン彼氏の事情
「わたしは大丈夫。二、三日休めば良くなるわ。それよりあなたも少し痩せたんじゃない?」
「それより、お父さんの様子は?」
「……もうあまり長くは無いみたい」
「ドナーも見つからないままなのね」
「そうね」
「お母さん、わたしの腎臓を使って」
「何言ってるの?」
「わたし、まだ若いし、一個あれば大丈夫。生きていける。だから、わたしの腎臓を使って下さい」
後で知った。
生体腎移植は、他人ではドナーになれないって事を。
もし、わたしと龍くんが結婚してたら、その時はわたしもドナーになれる。
でも結婚なんて無理だよね。
わたし達、別れてしまったんだし。
病気になった今でも、わたしの事を心配してくれるお母さん。
わたし、お母さんの為に何をしてあげられるだろう。
龍くんとは別れたけど、それでもお母さんを支えてあげたい。
お父さんが元気になったら、お母さんも元気になる。
だからと言って、龍くんが結婚に同意してくれるはずは無い。
そんな思いが渦巻いてどうしたら良いのか答えが見つからなかった。
わたしが横にいる間に、お母さんはゆっくりと眠りに落ちた。
起こさないように気をつけながら繋いだ手を解く。
音がしないように静かにドアを閉めて、リビングに戻った。
「お母さん、眠ったわ」
「そう」
「それじゃ、わたし帰るね」
「駅まで送るよ」
「ありがとう。でも大丈夫。お母さんの傍に付いててあげて」
「……わかった」
「それじゃ、さようなら」
頭を下げ、靴を履いた。
それから一度彼の方を振り返り、ドアを開けた。
「くるみ」
「えっ?」
「いや。何でもない。気を付けて」
「それじゃ」
わたしの後ろでドアがカチャリと閉まった。
「それより、お父さんの様子は?」
「……もうあまり長くは無いみたい」
「ドナーも見つからないままなのね」
「そうね」
「お母さん、わたしの腎臓を使って」
「何言ってるの?」
「わたし、まだ若いし、一個あれば大丈夫。生きていける。だから、わたしの腎臓を使って下さい」
後で知った。
生体腎移植は、他人ではドナーになれないって事を。
もし、わたしと龍くんが結婚してたら、その時はわたしもドナーになれる。
でも結婚なんて無理だよね。
わたし達、別れてしまったんだし。
病気になった今でも、わたしの事を心配してくれるお母さん。
わたし、お母さんの為に何をしてあげられるだろう。
龍くんとは別れたけど、それでもお母さんを支えてあげたい。
お父さんが元気になったら、お母さんも元気になる。
だからと言って、龍くんが結婚に同意してくれるはずは無い。
そんな思いが渦巻いてどうしたら良いのか答えが見つからなかった。
わたしが横にいる間に、お母さんはゆっくりと眠りに落ちた。
起こさないように気をつけながら繋いだ手を解く。
音がしないように静かにドアを閉めて、リビングに戻った。
「お母さん、眠ったわ」
「そう」
「それじゃ、わたし帰るね」
「駅まで送るよ」
「ありがとう。でも大丈夫。お母さんの傍に付いててあげて」
「……わかった」
「それじゃ、さようなら」
頭を下げ、靴を履いた。
それから一度彼の方を振り返り、ドアを開けた。
「くるみ」
「えっ?」
「いや。何でもない。気を付けて」
「それじゃ」
わたしの後ろでドアがカチャリと閉まった。