マザコン彼氏の事情
午後の仕事が始まると、一斉に受注デスクの電話が鳴り出す。
「岡嶋さん、一番に栗原くんから」
「はい」
栗原くんの名前を聞くと、反射的に真保ちゃんを見てしまう。
彼女と目が合う。
すぐにそらしてしまった彼女。
やっぱり意識してるんだね。
「はい、岡嶋です。あ、お疲れ様。……えっ? 本当? 凄いじゃん」
栗原くん、大口の注文を取って来た。
わたしが担当ってわけじゃないんだけど、何故か最近、指名される。
受注の中で一番暇なわたし。
例え担当じゃなくても大歓迎だった。
わたしは、電話を切るとすぐにメーカーのサイトを開いた。
「栗原くん、どうかしたんですか?」
「真保ちゃん、彼、凄い注文取ってきたわよ」
「本当ですか?」
「うん。今から在庫あるかどうか確認しなくっちゃ」
それ以上は何も言わなかったけど、真保ちゃんの表情は嬉しそうに見えた。
やっぱり確定だね。
真保ちゃん、栗原くんと上手くいくといいな。
夕方、栗原くんが帰って来た。
とても嬉しそう。
「お疲れ様」
「お疲れ様です。どうでした? メーカーに在庫ありましたか?」
「大丈夫。全部押さえといた。でも、一点だけ納期がかかるんだけど大丈夫?」
「どれですか?」
近い。
わたしの手元にあった発注書を見る為に、ぐんと顔を近づけて来た栗原くん。
何だかドキッとした。
「これ?」
「えっ? あ、ああそう。これよ」
何焦ってるんだろ。
「十日か……まあ、ギリギリ大丈夫です」
「そう。良かった」
「それじゃ俺、残務処理して来ます」
「うん」
そう言うと、栗原くんは自分のデスクに戻って行った。
「あの、岡嶋さん」
「えっ?」
横を見ると、真保ちゃんがちょっと真剣な顔をしてこっちを見ていた。
「どうかした?」
「今日の帰り、一緒に飲みに行きませんか?」
「嬉しい。わたしも真保ちゃんと食事に行きたかったのよ」
彼女から誘ってくれるなんて、凄く嬉しい。
いつかもっと彼女とプライベートでも親しくなれたらいいなと思ってたから。
「どこ行く?」
「会社の筋向いの天翔はどうですか?」
天翔は焼き鳥屋。
ビルを出たら焼き鳥のいいにおいが空気にまぎれて鼻腔を刺激する。
ぐるっとお腹が鳴るのはあの店のせい。
近くてとても心惹かれていたんだけど、女一人では入る勇気が無かった。
「真保ちゃん、天翔行った事あるの?」
「ええ、何度か」
「そうなんだ。実はわたし入った事ないんだ。だけど、会社を出るといつも誘惑に負けそうだった」
「ああ。あの匂いですね? それに誘われて入ってしまったわたしです」
「もしかして一人で?」
「ええ」
「へ~、意外。わたし無理だわ、一人で入るのは」
「そうですか? あの店、結構女性客も多くて入りやすいんですよ」
「知らなかったわ」
「従業員、イケメン揃いですよ」
「マジ?」
イケメン好きのわたしはすぐに目を輝かせてしまった。
「岡嶋さん、一番に栗原くんから」
「はい」
栗原くんの名前を聞くと、反射的に真保ちゃんを見てしまう。
彼女と目が合う。
すぐにそらしてしまった彼女。
やっぱり意識してるんだね。
「はい、岡嶋です。あ、お疲れ様。……えっ? 本当? 凄いじゃん」
栗原くん、大口の注文を取って来た。
わたしが担当ってわけじゃないんだけど、何故か最近、指名される。
受注の中で一番暇なわたし。
例え担当じゃなくても大歓迎だった。
わたしは、電話を切るとすぐにメーカーのサイトを開いた。
「栗原くん、どうかしたんですか?」
「真保ちゃん、彼、凄い注文取ってきたわよ」
「本当ですか?」
「うん。今から在庫あるかどうか確認しなくっちゃ」
それ以上は何も言わなかったけど、真保ちゃんの表情は嬉しそうに見えた。
やっぱり確定だね。
真保ちゃん、栗原くんと上手くいくといいな。
夕方、栗原くんが帰って来た。
とても嬉しそう。
「お疲れ様」
「お疲れ様です。どうでした? メーカーに在庫ありましたか?」
「大丈夫。全部押さえといた。でも、一点だけ納期がかかるんだけど大丈夫?」
「どれですか?」
近い。
わたしの手元にあった発注書を見る為に、ぐんと顔を近づけて来た栗原くん。
何だかドキッとした。
「これ?」
「えっ? あ、ああそう。これよ」
何焦ってるんだろ。
「十日か……まあ、ギリギリ大丈夫です」
「そう。良かった」
「それじゃ俺、残務処理して来ます」
「うん」
そう言うと、栗原くんは自分のデスクに戻って行った。
「あの、岡嶋さん」
「えっ?」
横を見ると、真保ちゃんがちょっと真剣な顔をしてこっちを見ていた。
「どうかした?」
「今日の帰り、一緒に飲みに行きませんか?」
「嬉しい。わたしも真保ちゃんと食事に行きたかったのよ」
彼女から誘ってくれるなんて、凄く嬉しい。
いつかもっと彼女とプライベートでも親しくなれたらいいなと思ってたから。
「どこ行く?」
「会社の筋向いの天翔はどうですか?」
天翔は焼き鳥屋。
ビルを出たら焼き鳥のいいにおいが空気にまぎれて鼻腔を刺激する。
ぐるっとお腹が鳴るのはあの店のせい。
近くてとても心惹かれていたんだけど、女一人では入る勇気が無かった。
「真保ちゃん、天翔行った事あるの?」
「ええ、何度か」
「そうなんだ。実はわたし入った事ないんだ。だけど、会社を出るといつも誘惑に負けそうだった」
「ああ。あの匂いですね? それに誘われて入ってしまったわたしです」
「もしかして一人で?」
「ええ」
「へ~、意外。わたし無理だわ、一人で入るのは」
「そうですか? あの店、結構女性客も多くて入りやすいんですよ」
「知らなかったわ」
「従業員、イケメン揃いですよ」
「マジ?」
イケメン好きのわたしはすぐに目を輝かせてしまった。