好きが涙に変わって溢れてく。
「おかえり」
リビングに入ると、お兄ちゃんが椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。
「あれ?今日大学は?」
「休み。たまには家でゆっくりしてぇし」
片桐成稀。
私の2個上のお兄ちゃんで現在大学生。
身長高いし体格もいいし、結構モテるらしいけど、後は意地悪な性格がなかったら完璧だと思う。
「お前もこんな早い時間に帰ってくるなんてヒマ人だな。友達いねぇのか?」
どこかで聞いた言葉だと思えば、先ほど魁に言われた言葉とソックリだ。
「違うわよっ‼私もたまにはゆっくり休みたいだけ‼」
思わずムキになりながら叫んだ。
こういう所は魁とよく似てる性格してるわ。
「“たまに?”
“いつも”の間違いじゃねぇの?」
「だから違うってばっ!アホ兄貴‼」
「アホってお前……」
意地悪そうに笑うお兄ちゃんに、私は顔が真っ赤になりながら反論した。
本当は当たってるから、あまり言い訳できない。
「んなムキになんなって。冗談だっての」
「…………」
“ははは”と笑いながら飲み干したコーヒーカップを片付ける兄を、私は疑うように見つめていた。