好きが涙に変わって溢れてく。

全っ然わかんない。

とぼけてるのか本当なのか……


って、どうでもいいか。



さっきのことを思い出し、何気なく辺りを見回すと魁がじっとこちらを見つめていた。


だけど私は目を合わせないように視線を戻すと、何かが視界をかすめる。

それは、廊下を走っていく明菜。



魁がいるのにどこに行くんだろう……


そう思っていたら、妙な胸騒ぎを覚えた。



尊琉君が行ったすぐ後に走って行った明菜。


しかもその方向は尊琉君と同じ。





『――でも桜綾のあの噂知られたら嫌われちゃうかもよ?信じるか信じないかは勝手だし、物好きな男かもしれないしね』



『――人は見かけによらないからねぇ。私と桜綾とどっちを信じるのかなぁ?』





まさか……まさかね。


だけど嫌な予感は消えなくて、私は気付かれないように明菜の後をつけていった。



階段を上って廊下の壁からこっそり覗くと、そこにはやっばり明菜が尊琉君に話かけている。


遠いから何話してるのかは全然聞こえないけど、大体予想はつく。



明菜……っ‼



怒りで体中が震える。


また自分に味方をつけようって訳?

私をもっと悪者にしようって訳?



どうして関係ない人を巻き込むのよ、尊琉君は関わりないのに……っ



嫌われるなんてどうでもいい。

だけどあいつの行動が許せない。



今飛び出していったって、またどうせ泣いて私を責めるだけ。

もっと自分を苦しめるだけだ。


……だけど。




「明菜」



私には、黙って見てるなんて出来ない。

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