好きが涙に変わって溢れてく。
「明菜って子に言ってやったから。お前が最低だって。周りにいた奴にも聞こえるようにでっけぇ声で」
“尊琉君はそんな人じゃない”
私が明菜に言った言葉は本当だったんだ。
尊琉君はちゃんと私のことわかってくれた。
あの冷たい目は、私に向けられたんじゃなかったんだ……
「もうあんな奴ほっとけ。桜綾ちゃんには友達がいるだろ?1人じゃねぇんだからさ」
「うん……」
誰もいなかったはずの廊下に、チラホラと人が集まり始める。
それに気付いた尊琉君は、すぐに私の体を離した。
「あ……ゴメンな。つい……」
「ううん。尊琉君のお陰で元気出た。ありがとう」
本当に救われた。尊琉君の言葉に。
泣きそうになるくらい、私には大きい言葉だ。
「何かあったら、俺にも言えよ?俺はずっと桜綾ちゃんの味方だから」
「うん……っ」
鈍くて鈍感で、ちっとも気がつかない性格。
だから、尊琉君の1つ1つの行動に深い意味が込められているなんて、この時の私は知らなかったんだ。
そして、抱きしめられている所を魁に見られていたことも――
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