好きが涙に変わって溢れてく。

どうしよう……とりあえず冷やさなきゃ……


先生に氷を貰おうとカーテンを開けようとした時、先にシャッとカーテンが開いた。



「……っ」



そこにいたのは尊琉君。


またとっさに下を向いてしまった。



「ほら、これ」



手が差し出されて、そこにはビニール袋に入ってタオルに包まれた氷がある。


まさに私が今取りにいこうとしていたもの。



「あ、ありがとう……」



ビックリしながらも受け取ると、急に頬を挟まれた。



「っ!?」



上を向かされ、必然的に前髪で隠れていた腫れた目が露わになる。





「何があった……?」




腫れた瞼にそっと触れて、尊琉君は悔しそうに顔を歪ます。


すぐ近くにある顔に、私はキュッと目を瞑った。



「あの……」


「頼むから、俺のいない所で泣いたりすんなよ……」


「え……?」



今にも消えてしまいそうな声で、尊琉君はとても苦しそうに見える。


だけど私には、その言葉の意味が全くわからなくて……




「ゴメン。何でもない」



目を逸らして手を離した尊琉君は出て行った。



「帰りに迎えに来るから」


そう言い残して。





何だったんだろう、今の。


頭の中が真っ白になって、何も言えなかった。



この時間が終わったら帰ろうと思っていた。だけどああ言われてしまったら、帰りづらくなってしまう。



貰った氷を握り締め、私は布団の中に潜る。


もしかしたらあんな尊琉君をみたのは、初めてかもしれない。


脳裏にはさっきの尊琉君の表情が残っていて、鼓動が激しくなっている。



考えるのが嫌になって、私は目の上に氷を置いて少し横になることにした。

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