好きが涙に変わって溢れてく。

「何でって、廊下で……」


「あれは確実にお前は悪くねえだろ」


「でも私があの時ちゃんと気をつけてたら……」


「そりゃあお前がドジだから仕方ねぇし」



久しぶりにカチンとくる言葉。


謝ってんのにドジってっ。



「いつもの魁に戻ってきたねー、嫌味ったらしいの」


「へっ、俺はいつもこんなんだ」



なぁにが“こんなんだ”よ。
かっこつけて。


って言おうと思ったけど、何か笑えてきた。



「何笑ってんだよ」


「別にー。魁だなぁって思って」


「はぁ?変なヤツ」


「結構結構」



そんなこと言いながら魁もちょっと笑ってるし。


どっちが変よ。




「でも、ありがとう」



いつもの私じゃなくて、今は素直にそう言った。

ちゃんと伝えたかったから。




「そういえば、前の時もちゃんとお礼言ってなかったなぁって思って。酷いこと言っちゃったし」



おまけに逃げてきちゃったしね。



「あぁ……あの時は真剣にヘコんだけどな」


「ごめんごめん」



フッと笑う魁の横顔は、本当に悲しそうに見えた。



でもごめんね、あの時私が言った言葉は嘘じゃなかったんだよ。


ただ、全てが絶対に本当でもなかったんだ。



「嬉しかったよ」



真面目な顔して見るから、ちょっとだけ緊張する。


私は今の気持ちを正直に伝えた。

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