好きが涙に変わって溢れてく。
ん?誰の声……?
「わっ‼」
顔を見るまえに腕を引かれてまた走りだす私。
おまけに頭にブレザーを被されて前が見えない。
ちょっと待って……まだ息切れ治ってないのに……っ。
引っ張られていても走ってるのは自分の足。走る速さは緩まない。
もう限界だって……
掴まれている腕を振り解いてでも歩こうと思ったら、急にピタリと止まった。
あれ……雨当たってない。
「大丈夫か?」
ブレザーを取ると、彼は持っていたタオルで私の頭を拭いてくれた。
「尊琉君……」
声の主は尊琉君だった。
私を屋根のあるベンチの所まで誘導してくれたようだ。
「なんで尊琉君が……」
「丁度見つけたからさ。思わずね」
ブレザー被せてくれたから私はあんまり濡れずにすんだけど、尊琉君はカッターシャツだけで全身びしょ濡れ。
私よりもよっぽど濡れてる。
「私よりも尊琉君の方がびしょ濡れじゃない」
拭き終わったタオルをもらうと、尊琉君の頭を拭いた。
髪の毛からポタポタと水滴が落ちている。
「あ……何も考えてなかった」
「このままじゃ尊琉君の方が風邪ひくよ」
タオルで拭き取ってあげていると、雨は小降りになり始めた。
「ありがとう。通り雨だから、すぐに止むと思うんだけどな」
「ほんとに?なら少し待ってようか」