好きが涙に変わって溢れてく。

一応一通り拭いたけど、濡れた制服が尊琉君の体に張り付いて、すごく冷たそう……


尊琉君は平然としてるけど、絶対寒いよね。



「尊琉君、手かして」


「え?」


「いいから」



戸惑う尊琉君の手を握り締めると、氷のように冷え切っていた。



「あったけー」


「こんなことしか出来くてごめんね」



こんなに温まってるのは尊琉君のおかげ。


柔らかく微笑んで、尊琉君も握り返しす。




「いや、十分。すっごい温まる」


「そっか。よかった……」



それから暫く待っていると、本当に雨は上がり始めた。



「よし、行こっか」


「うん」



握り締めた手はそのままに、私たちは歩き出す。


不思議とその時は手を解こうとは思わなかった。


どうしてかは、よくわからなかったけれど。












――――――――
―――――


「桜綾ー‼」



階段の下からお母さんのデカい声。


目を覚ましてノロノロと起き上がると、ズキンと頭が痛んだ。



「いった……」



それに体がダルい。喉も痛いし……


もしかして、風邪ひいた?


いや、まさかね……




「やば‼遅刻!」



枕元に置いてある時計を見てガバッと起き上がる。


脈を打つように痛む頭痛に耐えながら、私は制服に着替えて家を飛び出した。

< 291 / 432 >

この作品をシェア

pagetop