好きが涙に変わって溢れてく。

見つめ合ったまま、何も言わない魁。



「魁?」



呼んでも無反応。


どうしたんだろう突然。

そんな真剣に見られたら、変に緊張するじゃん。


沈黙の中、ふいに魁が何か言おうと口を開いた時。





「……桜綾ちゃん?」



小さく聞こえた声に、私たちはバッとそちらに振り返った。



「た、尊琉君……」



扉付近で呆然と佇んでいる尊琉君。


そして魁の方を見ながら、こちらに近付いてくる。




「熱あるって聞いて……大丈夫か?」


「うん。まだ下がってはないけど、結構良くなってきたよ」



チラッと隣を見ると、魁は尊琉君と目を合わせていた。


そういえば2人って初対面?


なんか、凄く睨み合ってるように見えるのは気のせい……?





「あ、そういえば、明菜の所に行かなくていいの?」


「お、おぉ……そうだな」



尊琉君から目をそらして立ち上がる魁は、どこか悲しげに見える。



「あの、本当にありがとうね」



遠くなっていく背中に言うと、魁は片手を上げて出て行った。

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