好きが涙に変わって溢れてく。
「じゃあ次はここねっ‼」
明菜に連れられてやってきた場所。それを見て、私は初めて足が止まった。
「え……」
目の前にある大きな建物は、薄暗く古びていて今にも崩れ落ちそうに出来ていたから。
この場所があることは知っていたけど、毎回ここだけを避けてきたから。
「ここに、入るの……?」
「そうよ」
嘘でしょ……絶対無理だって。
大っ嫌いなお化け屋敷なんだから。
「ゴメン……ここだけはちょっと……無理」
無理なんてもんじゃない。大無理。
誰かが一緒にいたって入れない。
怖いものは怖いんだから。
「やっぱり私は止めておくね」
本物じゃなくても無理。
わかっていても入りたくない。
「でも、尊琉君がいるじゃない」
「そうだけど……」
尊琉君が嫌って訳じゃない。むしろ尊琉君だからこそ入れない。
きっとこういうのって男の子に可愛くキャーッとか言って抱きつくんだろうけど、私の場合それじゃ済まない。
もっと酷いから、尊琉君に何するかわかんないし。
だから絶対ダメだ。
「じゃあ俺も止めとく。2人で行ってこいよ」
後退りする私の隣に尊琉君が来てくれた。
すると明菜はボソッと一言。
「こんなのただの子供だましなのにねー」
その言葉にどうしてかわからないけどムカッときて、私は尊琉君の腕を掴んだ。
「やっぱり入る」