好きが涙に変わって溢れてく。

「え?」



重々しく口を開く彩葉。


どういう意味……?



「べ、別に反対してる訳じゃないの‼尊琉君と上手くいくのも私は嬉しいしっ」



彩葉の様子がおかしい。


いつもと違う。




「ただね……桜綾。言わなきゃいけないことがあるんだけど、魁が」


「幸せだよ」



“魁”という名前を聞いた瞬間、反射的にその言葉が出ていた。


今、彼の名前を聞くのは辛い。




「優しいし、辛い時はいつも側にいてくれて、すごく感謝してる。尊琉君といたら、幸せになれるような気がするの」



ウソじゃない。

尊琉君のこと、少しずつ好きになっていってる。


これから先、もっともっと尊琉君のことを好きになるような気がするの。




「……そう、それならいいの。桜綾が幸せならそれでいい。祝福するよ」


「ありがとう。……って言っても、まだ付き合ってないけどね」



尊琉君がまた言ってくれるのを待つか、私から伝えるのかも決めてない。


どうなるかはわからないけれど。






外に尊琉君の姿が見えて、私は手を振った。



「ゴメン、ちょっと行ってくるね」


「うん。行ってらっしゃい」



3人から離れて、私は尊琉君の元へ。


後ろの会話は、全く耳に入ってこなかった。











「彩葉、本当にこれでいいのかな……?」


「ちゃんと伝えなくていいの?」


「わかってるけど……遼也に聞いただけだからまだ確かじゃないし。それに桜綾、何か無理してるように見えるのよね」


「尊琉のこと?」


「ううん。尊琉君のことは本当のこと言ってるんだと思う。ただ……ちょっとここの所様子がおかしいからさ」




彩葉達がそんなこと話していたなんて、知るよしもなかった。

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