好きが涙に変わって溢れてく。
「いい気味……」
トイレに行った時、ボソッと背後から聞こえたのは明菜の声。
鏡越しに明菜を睨み付ける。
「そう怖い顔しないでよ。写真はまだ手元にちゃんとあるんだから」
「魁とはもう話さない。話かけてきても無視してる。もう何日も経つし、あんたもよく見てるんだからわかってるでしょ?早くカメラ渡してよ」
「まだダメよ。私の気が済んでないから。それに少しでも私に対して気に食わないことしたら、すぐにでもバラまけるしね」
どこまで最低な奴かと思っていたけど、これほどまでの奴と出逢ったのは初めてだ。
きっと明菜との出会いは、私が生きてきた人生の中で一番嫌な出来事になるだろう。
「最低だね」
「今頃知ったの?」
鼻で笑う姿はいつ見ても腹立たしい。
どんな明菜も私は嫌い。
「長年の片想いも実らず、気持ちを伝えることも出来ないまま終わっちゃったって訳ねー。何年も好きでいたのに、たった数週間で好きになった人に盗られちゃうなんて可哀想~」
泣き真似をして顔を手で覆う明菜。
苛立ちを私は一生懸命に堪えた。
「それがあんたの生きがい?」
その一言に、明菜の表情は一変した。
氷のように冷たい目を私に向け、ゆっくりと近付いてくる。