好きが涙に変わって溢れてく。



「片桐‼」


ドアを開けて、名前を叫んだ。


でも…



教室には、誰1人の姿もない。


真っ暗で、机と椅子が均等に並んでいるだけ。



遅かったか……



まだ諦めきれなくて、片桐に電話をした。



その時。



「……魁?」



着信音と共に後ろから聞こえたのは、間違いなくあいつの声。


カバンの中からスマホを取り出そうとしている片桐。


俺が電話を切ると、もちろん着信音も聞こえなくなった。




「もしかして、魁が電話してたの?」



今目の前にいるってことが信じられなくて、愛しく感じて


抱きしめたいと、強く思った。



「どうしたの?明菜ならどこかに行ったよ?」


違う。そうじゃない。



用があるのは、会いたかったのは、明菜じゃなくて……



「きゃっ!?」



帰ろうとする片桐の手を掴んで引き寄せ、俺は強く抱き締めた。


突然のことで、きっと片桐も驚いているに違いない。



だけどもう……限界だった。









「好きだ」

< 364 / 432 >

この作品をシェア

pagetop