好きが涙に変わって溢れてく。
「片桐‼」
ドアを開けて、名前を叫んだ。
でも…
教室には、誰1人の姿もない。
真っ暗で、机と椅子が均等に並んでいるだけ。
遅かったか……
まだ諦めきれなくて、片桐に電話をした。
その時。
「……魁?」
着信音と共に後ろから聞こえたのは、間違いなくあいつの声。
カバンの中からスマホを取り出そうとしている片桐。
俺が電話を切ると、もちろん着信音も聞こえなくなった。
「もしかして、魁が電話してたの?」
今目の前にいるってことが信じられなくて、愛しく感じて
抱きしめたいと、強く思った。
「どうしたの?明菜ならどこかに行ったよ?」
違う。そうじゃない。
用があるのは、会いたかったのは、明菜じゃなくて……
「きゃっ!?」
帰ろうとする片桐の手を掴んで引き寄せ、俺は強く抱き締めた。
突然のことで、きっと片桐も驚いているに違いない。
だけどもう……限界だった。
「好きだ」