好きが涙に変わって溢れてく。
俺から距離を置いた片桐は、ずっと下を向いたまま。
「もう、遅い」
その時、片桐がフッと弱々しく笑みを浮かべたのが見えた。
遅いって?
「ごめんね。本当に、ごめんなさい」
深く深く、頭を下げる。
嘘だろ?
嘘だよな……?
「“ごめん”って、どういう意味?
だって……」
「他に好きな人がいるの。魁にもちゃんと、言ったでしょ?」
だって、片桐の本当に好きな人は――……
「嘘言うなよ。だって、お前の本当の気持ちにも、やっと気付いたのに……」
その時、片桐の体がピクリと反応した。
「……そっか」
薄く笑って、片桐はまた下を向く。
まるで、何かを隠すように……
「うん……。ずっと、好きだったよ。
ずっとずっと前から魁のことしか見てなかった。どうしようもないくらい、大好きだった」
どうしてそんな、過去形にして言うんだよ。
気付かなかったとは言え、俺もずっとお前のことが好きだったのに……
「どういう意味だよ……っ、なぁ‼俺は、こんなにもお前の事が好きなのに、お前は……違うのか?」
近付いて、肩を掴んで揺らした。
頼むから、嘘だっていってくれ。
やっと思いが通じると思ってたんだ。
ワガママかもしれない。
けど……お願いだから、“今も好きだよ”って言ってくれ。
「なぁっ‼片桐‼」
「尊琉君と付き合ってるの‼」