好きが涙に変わって溢れてく。
――え?
今、何て言った……?
耳を疑って、信じられなくて俺は掴んでいた手を離した。
片桐は俺を真っ直ぐに見て、ハッキリ言ったんだ。
「今日告白されて、尊琉君と付き合ってる。だから魁の気持ちには、答えられない」
俺はただただ、呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
「本当、に……?」
俺の問い掛けにも、片桐は迷わず首を縦に振る。
「尊琉君に告白されたのは、今日が初めてじゃないの。前に『好きな人がいる』ってちゃんと断ったけど、尊琉君は『それでもいい』って私の側にいてくれて、辛い時に支えてくれた。泣いた時も、いつも尊琉君が側にいてくれたの。それで尊琉君の気持ちに答えたいって思って、私も少しずつ魁を忘れようとしてた」
俺が、そうなるようにしてたってことか……?
俺が、明菜と付き合ってたから……?
「魁に気持ちを伝えたいって思ったけど、明菜と付き合ったし。それまで私は素直になれなくて、ちゃんと魁にわかるような態度とれなかった。だからこれは私が悪いの。私の気持ちの問題だから」
胸を押さえて、何かに耐えるように表情を曇らせる片桐。
何も……言えなかった。
「それでやっと、尊琉君のことを必要だって思える時がきたの。一緒にいたいって、思えるようになったの。だから……」
聞きたくない。
お前の口から、そんな言葉聞きたくない。
なぁ片桐。
本当に俺たち、遅いのか……?
「私は、尊琉君のことが好き。尊琉君を裏切るなんて、私には出来ない」