好きが涙に変わって溢れてく。

「じゃあまた明日……」



先に行こうとする尊琉君の手を掴んで、それを止めた。



「……行かないで」



きっと尊琉君は明菜達の所に行くつもりだ。

カメラを奪いに。




「お願い、行かないで。離れたくないよ……」



尊琉君を危険なめに合わせるなんて絶対いや。


それなら写真なんてどうでもいい。



それに今は、尊琉君と離れたら自分がおかしくなってしまいそうで嫌だったから。



「でも俺……」


「いいの、もういい。尊琉君が側にいてくれたら、それでいいからっ」



それでも尚行こうとする尊琉君の体に、私は必死になってしがみついた。



「一緒にいてほしいの……」



そうじゃないと、一度決めたことがまた揺らいでしまう。


早く埋めてしまわないと。


尊琉君でいっぱいにしてくれなきゃ、私の身が持たないよ……



一生懸命涙を堪えたのに、また溢れてきた。


いろんな意味で、辛い。




「……わかった、行かない。桜綾ちゃんと一緒にいるから」



私の手を握って、そのまま私の体を包み込んでくれた。


魁じゃない、尊琉君の腕で。



ずっとそのままでいて……


さっきのこと、忘れさせて



涙の意味は、絶対に違うから。


後悔なんてしてないんだから……







「ねぇ桜綾ちゃん」


「なに?」


「本当に……俺なんかでいい?」




自信なさそうな小さな声。


知らない間に不安にさせてたのかな……



「……尊琉君がいい」



好きよ。私は尊琉君が好きなの。


尊琉君のことを受け入れたんだから当たり前なのに、半ば自分にそう言い聞かせているような気もした。




「俺、絶対に桜綾ちゃんを悲しませるようなことしないから。俺が、忘れさせるよ」


「うん。尊琉君のこと、信じてる」



私が幸せになれる道は、きっとこれが正しいんだ。


間違った選択じゃない。尊琉君のこと信じてる。




いつか、あなたでいっぱいにしてくれるって。



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