好きが涙に変わって溢れてく。


5組に到着して、ドアの小窓から明菜が見えた。


でも、誰かと話してる?



中に入っていけるような空気ではなく、俺はその場で待っていることにした。







「どういう意味!?あんた何か知ってるんでしょ!?」




外にいても十分その声は聞こえてきた。


この声って……


聞き覚えのある声に隙間からそっと覗くと、片桐といつも一緒にいる瞳ちゃんがいた。



何で明菜に怒鳴ってんだ……?



不思議に思って、わかる程度に聞き耳をたてた。




「しつこいわね……。知らないって言ってるでしょ?」



何だ今の。


あれが、明菜の声か……?




「嘘よ。今まで散々桜綾に酷いことばっかりしてきたくせに‼」


「あら、私だけのせいにしないでくれる?」


「私だけって、あんたしかいないでしょ!?桜綾から魁君奪って、嫌わせようと桜綾の噂みんなに広めて、いつだって桜綾を傷つけてきたくせに、他に誰がいるっていうのよっ‼」



――!?


奪って……?


噂、広めて……?



「噂なんて信じる方も悪いでしょ?魁だって信じたんだから、魁にも責任はあるんじゃないの?」


「……っ!?あんた最低……よくそんなこと言えるねっ‼」


「だってそうじゃない。私が広めたって信じる信じないはその人次第なんだし。信じたら信じた奴がバカなだけよ。
まぁでも魁がみんなの前で桜綾にあんな風に言ったのは、私には好都合だったけどね」



頭の中が、真っ白になる。


あの噂を流したのは、あいつだったのか……?


それも、ただ俺が片桐を嫌いになる為だけに?



だってあいつ『私じゃない』って、『桜綾と喧嘩してたから誤解してるだけ』って、言ってたじゃねぇかよ……

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