好きが涙に変わって溢れてく。
「桜綾がね、その日以来魁を避けるようになったの。もう嬉しくて。邪魔者はいなくなるし、気分はいいし。最高っ」
絶対に、許さないっ
「それは魁君に対してじゃなくて自分に対してでしょっ!?魁君を弄ぶのもいい加減にしたら!?あんたのその性格知ったら確実に終わりだねっ‼」
何があっても俺は
「残念、魁は私のことちっとも疑ってないわ。泣けばこっちのもんだし」
片桐のことを
「ほんと最低……っ‼カメラはどこよっ‼」
――全力で守る。
遂に限界がきて、俺は教室の扉を開けた。
「っ、魁君!?」
瞳ちゃんが俺の名前を呼んだ瞬間、明菜が体を強ばらせた。
ゆっくりと振り向いた明菜の顔は、明らかに焦りが漂っている。
「魁、君……」
そうだ、こいつは俺のこと呼び捨てで呼んだことなかったんだ。
瞳ちゃんの声は俺の耳をすんなり通り抜ける。
俺が用があるのは、今見下ろしているこいつだけだ。
「そういうことだったんだな。今までずっと」
話を聞かれた以上、明菜は何も言い訳できないでいた。
顔を歪ませ、苛立ちを見せている。
「お前だったんだな、あの噂を広めたのは。片桐を苦しめてたのは。
――全部、お前なんだな」
そう言い放つと、明菜は諦めたのか声を出して笑いはじめた。
「……っ、そうよ、全部私。私が流したの。あなたもバカよね、ずっと信じてんたんだから」
今までの明菜とは想像もつかない、冷たい瞳。
「なんだ。こんな簡単にバレちゃうなんてね。つまんない」
本当はこんな奴だったんだ。
ここまで最低な奴だったんだ。
ムカついて今すぐにでも殴りたくなったけど、今はその怒りをぐっと堪える。