好きが涙に変わって溢れてく。

「桜綾がね、その日以来魁を避けるようになったの。もう嬉しくて。邪魔者はいなくなるし、気分はいいし。最高っ」



絶対に、許さないっ



「それは魁君に対してじゃなくて自分に対してでしょっ!?魁君を弄ぶのもいい加減にしたら!?あんたのその性格知ったら確実に終わりだねっ‼」



何があっても俺は



「残念、魁は私のことちっとも疑ってないわ。泣けばこっちのもんだし」



片桐のことを



「ほんと最低……っ‼カメラはどこよっ‼」




――全力で守る。






遂に限界がきて、俺は教室の扉を開けた。



「っ、魁君!?」



瞳ちゃんが俺の名前を呼んだ瞬間、明菜が体を強ばらせた。


ゆっくりと振り向いた明菜の顔は、明らかに焦りが漂っている。



「魁、君……」



そうだ、こいつは俺のこと呼び捨てで呼んだことなかったんだ。


瞳ちゃんの声は俺の耳をすんなり通り抜ける。

俺が用があるのは、今見下ろしているこいつだけだ。




「そういうことだったんだな。今までずっと」



話を聞かれた以上、明菜は何も言い訳できないでいた。


顔を歪ませ、苛立ちを見せている。



「お前だったんだな、あの噂を広めたのは。片桐を苦しめてたのは。
――全部、お前なんだな」



そう言い放つと、明菜は諦めたのか声を出して笑いはじめた。



「……っ、そうよ、全部私。私が流したの。あなたもバカよね、ずっと信じてんたんだから」



今までの明菜とは想像もつかない、冷たい瞳。



「なんだ。こんな簡単にバレちゃうなんてね。つまんない」



本当はこんな奴だったんだ。


ここまで最低な奴だったんだ。



ムカついて今すぐにでも殴りたくなったけど、今はその怒りをぐっと堪える。

< 377 / 432 >

この作品をシェア

pagetop