好きが涙に変わって溢れてく。
可愛らしいと思っていた明菜の笑顔も、今はとてつもなくイライラする。
「お前なんか大嫌いだ。もし片桐に何かしたら、女だろうが許さねぇ」
「あらあら。今までずっと私に惚れてた人がよくそんなことが言えるわね」
「それはあくまで表向きのお前だ。知ってたら好きになるかよ」
頬に伸びてきた手を避けて、俺は一歩後ろに下がった。
明菜の口元には、笑みが浮かんだまま。
「桜綾に何かしたら許さないって?
じゃあそうさせないようにあんたがずっと私の側にいることね。そしたら私も何もしないでいてあげる」
そう言うと、明菜はニコッと笑って手を振って教室から出て行った。
あまりに酷すぎる行為に、ペタリと地面に座り込んでしまった瞳ちゃん。
「やっぱり、あいつに何を言っても無駄だったんだよね」
下を向いてグッと手に力を込めている姿は、涙を絶えているような気もした。
「明菜は、昔からああいう奴だったのか?」
「うん、最悪な性格してるよずっと。みんな上辺しか見てないから、誰も明菜の本性に気付かないのよ。私だって最初は知らなかったし。けど私もたくさん経験してきたから、今では嫌でもわかってる」
瞳ちゃんも同じことをあいつにされたのか
今までどれだけそんなことしてきたんだよ
「そんな奴と付き合ってたなんて、ホント嫌になるな」
「仕方ないよ。上辺だけしか知らなかったら誰だって好きになるような外見じゃない。
……それよりも、桜綾が心配で」
頭を抱えて、本気で片桐のことを心配している瞳ちゃん。
「大丈夫。俺が何とかするから」
「何とかするって……どうするの?」
どうするかなんて、たった1つしかない。
「カメラを奪ってぶっ壊す」