好きが涙に変わって溢れてく。
――え?
微かに聞こえた声。
そして小さく何かが動いた感覚。
まさかと思い腕を離すと、そこには願った光景が。
「勝手に……、殺すんじゃ、ねぇよ……っ」
……魁が、いる。
ちゃんと目を開けて、私を見てる。
生きてる……魁が生きてる。
確かに魁が笑ってる。
笑って私の目をちゃんと見てくれてる。
夢じゃないよね……?
現実だよね……?
「何で、泣いてんだよ……。俺が死んだと思ったのか……?」
思うように声が出なくて、首を縦に振る。
優しい声。
絶対に夢なんかじゃない。
いつもの魁だ。
私の大好きな魁だ――……
「そんな訳、ねぇだろ……?こんな所で……死なねぇよ……」
よかった……本当によかった。
魁がまた目を開けてくれて、魁の声がきけて。
「正直、危ないとは思ったけどさ……。でも、お前の声が聞こえて……」
ずっと魁の名前を叫んでたの、魁に届いてたんだね……
「片桐の、おかげだな……。俺が今生きてんのは」
魁の右手が伸びてくると、私の頬にそっと触れた。
そして――……
「俺はちゃんと……ここにいるから……。だから、もう泣くな」
頬を伝う私の涙を、魁はそっと拭いてくれた。
優しく微笑んで、私を見ている。
「うん……‼」
不思議と、魁に拭いてもらうと涙はピタリと止まった。
魁も安心している様子だ。
「……いっ、て……‼」
体制を整えようと体を起こそうとした時、魁の顔が激痛に歪んだ。
その時私はハッとした。
「そうだ……、救急車……っ」
なんで気付かなかったんだろ。
スマホを取り出し、救急車を呼ぶ。
もっと早く呼べばよかった……
「魁」
「ん?」
「私のせいで……ゴメンね」
真剣に謝ったのに、魁は笑っている。
「お前のせいじゃ、ねぇよ。……それに、嬉しいんだ。俺」
「どうして?」
「だって……」
急に照れ隠しするように、私から目をそらす。
「やっと……お前のこと、守れたから」