好きが涙に変わって溢れてく。
笑っちゃったけど、そう言う気持ちも何となくわかる気がする。
こんな時が一番幸せだなぁって
実感できる気もするんだ。
「……なぁ、片桐」
「ん?」
隣を見上げると、魁はほんの少し頬を赤く染めている。
頭を掻きながら、どこか言いにくそうに魁は言った。
「その……これからも、よろしくな」
目を逸らして、頭ごと前を向いたまま。
……やっぱり何か変な感じ。魁からそういうこと言われるの。
「……ふふっ」
「なんで笑うんだよっ」
「ううん。何でもないっ‼」
そんなの、嬉しいからに決まってるでしょ?
嬉しくて嬉しくて幸せで、それを今、心から実感してるから。
「片桐はいつも俺が真剣に言うと笑うよなー」
あら……ちょっと機嫌悪くしちゃったかな?
だけどね魁、そんなあなただって
私は愛しいよ。
ふと、私はピタリと足を止めた。
「ねぇ、魁」
少し距離を開けて振り返った魁に、私は微笑みを向ける。
「もう、私のこと名前で呼んでくれないの?」
あの時“桜綾”って言ってくれたこと、今でもすごく頭に残ってる。
魁も、何となくわかっているようだ。
「桜綾って、呼んでほしいな」
そう言うと、魁はゆっくりと私に歩み寄ってじっと見つめてきた。
何かと思ってじっと魁を見つめ返していたら、腕を掴まれて魁の顔がどんどん近づいてくる。
そして――……
「…………」
重なった唇。
突然のことに頭がついていかなくて、私はずっと固まっていた。
「ゴメン……なんか、お前見てたらしたくなった」
みんなの後ろを歩いてたから見られることはなかったけど、実感が湧いてくるとやっぱり恥ずかしい。
だけど魁の顔は更に真っ赤になっていた。
「ほら早く行くぞ。……桜綾」
一生懸命顔を隠しながら私に手を差し伸べる魁が物凄く可愛くて、私はギュッとその大きな手を握りしめる。
「うんっ‼」